2013年04月13日

WPC処理の疑問と理解

4年前に自分のエンジンをオーバーホールした際に、フリクションロスの低減を目的として試験的に各部品に施したWPC処理ですが、2年前に一度ヘッド周りの仕様変更でバラした際に「おやおや・・・」と気になった点が一つ。SBR_0578
それは以前に紹介したカムキャップやこちらのバルブリフターも・・・

SBR_0583
それと画像のピストンピンにも当て嵌まる事なのですが、これらWPC処理を施した全ての部品の摺動部分が摩耗してWPC処理層が消えてしまっている・・・。ってことはやはり効果も消えてしまっているのか?という部分が気になっていまして、この部分の話でちょくちょく ” あの状態ってどうなのよ? ” という話題になったりするのですが、このWPC処理の効果って実際問題そんなに簡単に消えたりするのかどうかが知りたかったので、今回WPC処理をお願いする際に先ほどのピストンピンを実際に専門家に見て頂いたうえで疑問をぶつけて回答を頂いたのですが、
sbr_wpc
返答の内容は、何もない金属の表面にWPC処理を行った際に出来る金属表面の凸凹したディンプル層が使用していくにつれ摺動部分の凸が摩耗して無くなりプラトー状態になっているだけであって、WPCの効果が消えた訳ではない。との事で、じゃあ凸側が消えて残りの凹側だけになったということは効果が薄れているという事か?と質問したところ、「むしろWPC処理を行うことで表面硬度が上がっているので対摩耗性も良くなっている分、凸側が無くなって面粗さが整っているこのプラトー状態の時が一番いい状態です。」とのことで、どちらかと言えば初期馴染み性を良くさせるために取り入れていましたが、その効果は見た目以上に持続するらしいです。



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2017.9 /13 更新


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このたび実際に不二WPCさんに直接伺いまして、この部分の検証を実際に電子顕微鏡を使って調べていただきました。

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その結果、画像のリフターの状態までいくと流石にWPC層は磨耗して無くなっていることが確認できました。

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ですのでWPC処理の効果が持続するというのは一定の期間までとなり、効果は徐々に薄れていくことが分かりましたので訂正させていただきます。


また2017,9/13 現在、WPC処理とDLC処理の新しい見解は
http://secretbase-racing.com/archives/2017-09-13.html
の記事にて書いておりますので、宜しければこちらもご覧ください。




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ということで今回もピストンなどにはWPC処理を、ピンやリングにはDLC処理を。
また今回バラして検査した結果、当たりの強そうな場所にそれぞれWPCとDLC処理を試験的に施してみました。

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そして12Rのシリンダーは材質がニッケル合金なのでDLC処理は行なわず、摺動抵抗の低減を狙ってWPC処理を。 クランクはジャーナル部分を対摩耗性向上の為にWPC+DLC処理を施してもらいましたが、ピン部分へのDLCコーティングにはまだ不安が残るとの返答を頂いたのでWPC処理+ラッピング処理を施してもらいました。
ホンダがF1に参戦していた当時にこのプラズマを使うDLCコーティングの研究でトライ&エラーを繰り返して苦労したなんて話がありましたが、材質や形状によって膜厚成形や密着性をコントロールするのが非常に難しいようで、今回自分が施してもらったDLCと当時のホンダが施していたDLCでは性質や費用など名前が同じでも別物なウェットカーボンとドライカーボンくらいの比で別物なんでしょうね^^:
でも個人でも頑張ればトップカテゴリーで採用されている最先端技術に触れられる!って凄いことですよね。当然お値段も凄いですが・・・w
とりあえず現状でWPCとの価格差分だけの効果があるのか?また費用対効果の高い場所、低い場所などその辺を今回は見極めたいと思います。

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で、表面処理といえば遊心のコーイチさんが非常に面白い物を持っていて、以前にコーイチさんのレーサー1000RXに今年使用する為に加工されたクランクを見せて頂いたのですが、この画像のクランクに施された表面処理が面白くてWPC処理を施した金属の触り心地がサラサラなのに対してコーイチさんのクランクに施された表面処理はヌルッとした触り心地で、触った時に一瞬 ” 防錆処理でオイルでも塗ってあるのかな? ” と勘違いしてしまうくらいヌルヌルしている感触でした。
で、当初この表面処理の効果がどう出るのか知りたくて自分のクランクもコーイチさんのと同じにしてみようかな・・・?なんて興味が湧いて悩んだのですが、まずは当初の予定を消化するべくWPCとDLCのテストも先に行いたいし・・・ということで、この処理の効果の程は次回コーイチさんがエンジンをバラした時にでもまた見せて頂き、お話を伺おうかと・・・。

そういえばWPCの効果が消耗品なのか?って話ついでに、以前にチタンリテーナーってすぐにダメになってしまうような消耗品なの?みたいな話を仙台で聞かれたことがあるのですが、正直、使い方や組み方など、時と場合によると思うのでどちらとも言えませんとお答えしましたが、
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とりあえず今回バラして取り出した自分のAPE製のチタンリテーナーですが、4年間の間に全開高負荷条件のドラッグ走行を練習とセッティングも合わせると300本以上、普段の街乗り 〜 常に水温油温MAXな真夏の炎天下に九州までグルっと3000km かっ飛びツーリングもこなし、他の人と変わらぬ普段のストップ&ゴーな街乗り 〜 NOSを全開に吹いてタイムを本気で狙ったドラッグ走行まで・・・といった使い方をしたモノですが、今回点検してみたところでは異常摩耗も変形もクラックもなく不安要素も見当たらないので洗浄後に再投入予定です。

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4輪の800馬力だ1000馬力だの過激なモンスターマシンではこちらのコッター側が広がってコッターが飛んでバルブが落ちてしまうというトラブルを拝見した事はありましたが、今回自分のモノはこの部分にも異常は見られませんでした。
とりあえずよくある異常な話で、洗濯機でペットを洗ってしまうような無鉄砲な人や電子レンジにペットを入れて乾かそうとしてしまう無知な人などと同じように、ネットを徘徊すればそりゃ世界中で十人十色いろいろな使い方や症例があるのは当然なわけで、そのネガティブな情報や事例だけを取り上げて叩いてみたところでその部品を組んだ人の技術力や知識力、組まれていた部品背景までは分かりませんし、その壊れる割合が供給量に対して果たしていくつなのか?ってな話な訳で、やはり評価を下すのであれば見聞きした噂話より実際に自分で組んで試してみた経験則で・・・って思いますけど。。。って雀荘で向かいに座った生意気な八百屋のオヤジが言ってましたw


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ということで、結果論で言えば今回自分のAPE製チタンリテーナーは大丈夫でしたが、今後ブローするような事があれば「そら見たことか!言わんこっちゃない」ってココぞとばかりに叩かれるんでしょうねw

akane380 at 11:35│Comments(36)│ │DRAG RACE 製作記 

この記事へのコメント

1. Posted by oneoff   2013年04月13日 16:45
もうね、雀荘で向かいに座ったオヤジのとこで前記の話が吹き飛びましたねw


そこかい!wと............
2. Posted by Gabu   2013年04月14日 04:00
>one offさん

どうも真面目に書けないんですw
栄養ドリンクと風邪薬飲み過ぎだからですかね・・・w
3. Posted by 工具鋼屋   2014年04月15日 19:11
 とにかく、タングステン、モリブデン関係のトライボロジー話はデマが多い。超硬は金型にはほとんど使われない。硬さキチガイには目もくれず、独自のフリクションセオリーで市場を切り開いているSLD-MAGICのほうが迫力あるな。
4. Posted by Gabu   2014年04月16日 04:06
>工具鋼屋さん

はじめましてm(_ _)m
参考になるコメントありがとう御座います。
この表面処理の分野は状況や効果に対して賛否両論の多い部分だと自分も思います。
ですが効果が期待できないかと言われるとメタルなど好印象な部分もあったりで^^:
なので現状手を変え品を変えで手探りで試しています・・・。
5. Posted by 特殊鋼流通   2015年09月30日 14:58
 まあただ、SLD-MAGICも油と鋼の相互作用を用いた化学反応で滑りを制御しているのでWPCとの相性は非常に高いような気がします。
6. Posted by Gabu   2015年10月03日 14:39
>特殊鋼流通さん

勉強になります、ありがとう御座います!
もっと専門分野を勉強して理解力を高めたいと思いますm(_ _)m
7. Posted by ナノベアリングファン   2015年11月15日 00:44
 グラファイト層間化合物(GIC)は最近トライボロジー関係でも注目されているようですね。
8. Posted by Gabu   2015年11月15日 02:54
>ナノベアリングファンさん

ありがとう御座います!勉強になります!と言いたいところですが、底辺な自分にはグラファイト以外さっぱり分からずWikiで調ても内容がさっぱりです・・・。
9. Posted by クオリティーペーパー   2015年12月26日 22:32
日立金属の新理論ですね。ネットじゃわかんないんじゃないの?
10. Posted by Gabu   2015年12月27日 06:07
>クオリティーペーパーさん

それ以前にネットで調べるための検索ワードすら解らない気がします!
11. Posted by クオリティーペーパー   2015年12月27日 23:18
 そうですね〜。境界潤滑理論などがお勧めかと。
12. Posted by Gabu   2015年12月28日 02:23
>クオリティーペーパーさん

ご教示ありがとう御座いますm(_ _)m
早速検索して調べて見てみたのですが、なるほどね〜・・って知った風になれるほど単純な内容じゃなかったです^^: というか、見た事もない計算式がずらずらと書いてありました。。。
でも何となく油膜の性質的な部分や関係性など今まで意識していなかった部分を見ることが出来ました。
専門性が強すぎてついていけない感じですが、何か面白いヒントが無いかもう少しいろいろ見てきます!

13. Posted by ホンダマン   2015年12月29日 20:45
 なんとなく豊田中研と冶金研究所の格の違いがにじみ出ていますね。
14. Posted by Gabu   2015年12月30日 06:45
>ホンダマンさん

初めましてm(_ _)m
格の違いどころかコメント主様達の住む世界のレベルが違う気がしていますが・・・。

15. Posted by  バイクファン   2015年12月30日 20:10
 とにかく特殊鋼の絶対優位性を大同に対し強く望んでおられた節がある。やはり、ナゼという思いを、大事に研究すると同時に、好敵手(ライバル)へ常に仕掛ける
重いが今日のピストンピンに繋がった。大同はいまさら「高合金元年」とか言っているけど、だもの級の鉄鋼材料に特殊鋼と名前を無理やりかぶせて量が莫大だと威張っていた体質から急に研究開発型にはなれないと思う。
16. Posted by Gabu   2015年12月31日 03:13
>バイクファンさん

初めまして。
お話の本筋が見えませんが、いろいろな御意見、非常に勉強になりますm(_ _)m
17. Posted by 熱処理プレス   2016年01月06日 19:52
 いや〜、豊田中研も凄いですよ。最初に油の中からダイヤモンドを見つけた方がいたところですからね。日立金属はそういった意味では後追いであるが、それを防止する画期的な合金鋼を開発したこととそのフリクションのメカニズムを体系的に理論化したことにあると思う。
18. Posted by Gabu   2016年01月07日 03:35
>熱処理プレスさん

なるほど・・・。(何の事やらさっぱりですが・・・)
19. Posted by トライボロジスト   2016年01月07日 22:27
 ようするに情報が多少混乱しているということですね。元々この材料はハイテン成形用の金型材として開発されていたので、数100〜数1000MPaの話がよく飛び出してきて混乱している。この材料のフリクションを調べているテスト面圧は80MPaでDLCを凌駕しており、通常の鉄鋼材料よりも5〜10倍高い。それを認識すると新たな設計の展望が開けると思う。
20. Posted by Gabu   2016年01月10日 04:28
>トライボロジストさん

コメントありがとう御座いますm(_ _)m
21. Posted by 某トライボロジスト   2016年01月10日 23:10
 まあだけど課題もあって並程度のトライボロジストは
実機と対応する実験技術が伴っていない。翻って考えるとそれが、トライボロジーという学問の権威を失墜し続けてきた歴史がある。しかしSLD-MAGICの開発者K博士は
そのことを俯瞰できる、炭素結晶の競合モデル(CCSCモデル)を提案した。なぜバラツキが発生するのか?なぜ基礎評価と実機試験は合わないのかが、ある程度のプロのフリクションエンジニアだった分かる。
 バラツキに疲弊して力強い言葉も出せない上司よりも
博士の理論のほうが輝いて見える。
22. Posted by エンジン設計   2016年01月12日 01:32
 ピストンピンの内燃機関部品における最重要性はもっと発信しないと、パワートレインの進化はおぼつかない。それには境界潤滑現象の徹底的解析とトライボ試験の高度化の必要性がある。スクリーニングなどと甘えたことを言わないで、基礎評価ですがこれこれこういう理由で、実機と対応する内容になっています。という言葉が聞きたい。
23. Posted by Gabu   2016年01月13日 03:55
>某トライボロジストさん
>エンジン設計さん

コメントありがとう御座いますm(_ _)m
皆さんの思想や研究によって、より良い日本の技術が生まれる事を期待しておりますm(_ _)m

24. Posted by パワートレイン関係者   2016年01月16日 23:14
 GPaの単位を面圧に使うコメントはDLCに多いが専門家はだれも相手にしない。その点、このblogは良質なコメントが書かれているようですね。
25. Posted by NEDO技術士   2016年01月18日 02:07
 こんな凄いサイトがあるなんて知りませんでした。
次世代レシプロエンジンの開発指針になりました。
26. Posted by Gabu   2016年01月18日 03:00
>パワートレイン関係者さん
>NEDO技術士さん

コメントを頂きましてありがとう御座いますm(_ _)m
皆さんの専門性を活かしたご活躍を期待しております。
27. Posted by マテリアルズインフォマティックス   2016年02月13日 18:51
 IHI様もご勉強なさっておりますね。
28. Posted by Gabu   2016年02月16日 02:49
>マテリアルズインフォマティックスさん

コメントを頂きまして誠にありがとう御座います m(_ _)m
29. Posted by 境界潤滑の展望   2016年07月23日 20:02
ここにそれに関するたくさんの情報がありますね。

https://www.researchgate.net/profile/Kunichika_Kubota
30. Posted by Gabu   2016年07月30日 13:18
>境界潤滑の展望さん

コメントを頂きまして誠にありがとう御座います。
SLD-MAGICのような優れた材料がエンジン部品にも採用されれば技術的にもっともっと面白くなりそうですね。
31. Posted by 境界潤滑理論の追求が急務   2016年09月06日 00:38
 日産自動車の二段過ハイブリッドディーゼルに使われているらしいですね。国内のトップと思われている三菱は出来ていないしトヨタ、日産、ホンダは相変わらずローテクガソリンエンジンばかりだし、マツダディーゼルはちょっとましなぐらいであの絶賛は買い手の平衡感覚を失わせすぎている。
32. Posted by Gabu   2016年09月11日 06:07
>境界潤滑理論の追求が急務さん

コメントを頂きまして誠にありがとう御座いますm(_ _)m
33. Posted by これでしょ?   2017年07月30日 02:35
島根大学の客員教授である久保田邦親博士らが境界潤滑(機械工学における中心的摩擦モード)の原理をついに解明。名称は炭素結晶の競合モデル/CCSCモデル「通称、ナノダイヤモンド理論」は開発合金Xの高面圧摺動特性を説明できるだけでなく、その他の境界潤滑現象にかかわる広い説明が可能な本質的理論で、更なる機械の高性能化に展望が開かれたとする識者もある。幅広い分野に応用でき今後48Vハイブリッドエンジンのコンパクト化(ピストンピンなど)の開発指針となってゆくことも期待されている。
34. Posted by Gabu   2017年08月13日 02:12
>これでしょ?さん

コメントを頂きまして誠にありがとう御座いますm(_ _)m

同一文書のコメントがいろいろなサイトのコメント欄で見受けられますが肝心な内容に関するソースが見つかりませんでした。。。が、新たに生み出される素晴らしい先端技術にこれからも期待しております。

35. Posted by 業界通   2017年08月23日 22:34
まあ、この技術発表で日産のカルロスゴーンは退任したようなものだ。
36. Posted by Gabu   2017年08月24日 08:00
>業界通さん

コメントを頂きまして誠にありがとう御座いますm(_ _)m

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