2017年03月30日

ポート研磨 2017 (シートリング 段つき修正編)

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8年ほど前にポート研磨の道具 なんて話でポート研磨で使用する道具の記事を書いたのですが、アクセス解析をすると未だに「ポート研磨」という検索ワードは常に上位に居て検索でヒットした方が結構来られているようなので、最近は使う道具も使い勝手のいい物が安価に手に入ったりで変わってきましたので個人的な最新バージョンということでポート研磨で使用する代表的な道具とシートリングの段つき修正の作業的な流れをご紹介します。

まず8年前の記事の頃から使う道具での一番の変更点ですが、
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5年ほど前からエアリューターは基本使わずに、画像のモーターを使用して作業をしています。
これには何点か利点と言いますか、訳があるのですが、エアリューターは高回転で回して使用しないとトルクが殺されてしまいますが、モーターの場合はスピードコントローラーを使うことで極低回転でもトルクが十分で、エアツールだと芯ブレをして使い難かったロングシャンクの超硬バーなどが逆に片手を添え手として使えて非常に使い易くなりました。
また冬場の作業などでもエアツールのように凍らず手が全く冷たくないので非常に楽で、深夜の作業でもエアツールと違って騒音が少ないので非常に助かるなどメリットが多いです。
電気代に対してもエアツールも200Vのコンプレッサーをガンガン回しますので、もしかしたら100vモーターの方がエコかもしれません。

逆に欠点としては、エアツールと違ってトルクがあるので軍手などを嵌めて作業をした時に誤って軍手を巻き込まれた場合には非常に痛いか、大怪我に繋がる恐れがあるという点でしょうか。

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ちなみに先ほどのモーターに繋げるのはこちらのフレキシブルパワーシャフトというもので、画像のモノは 新亀製作所の製品でNo.510-N になりますが、手元にモーターが無くてもドリルなどがあればアイデア次第で流用は可能です。
で、ちょっと道具の細かな話を入れるとまた非常に長くなるので道具の小ネタは次回に書くことにしてポート研磨に於ける段付き修正ですが、

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まず段付き修正の段付きって何の事を言っているの?という話ですが、「段付き」とはシリンダーヘッドの製造段階で発生する加工痕のことで、鋳造されたシリンダーにシートリングを入れる為の下穴を機械加工で掘り、そこに後からシートリングを嵌め込んだ際にシートリングとシリンダーの繋ぎ目に発生する段差や加工で出来たバリなどの事を段付きなどと言いますが、この段付きを残したままだとポート内での流れや効率に悪影響を及ぼすので排除しつつ、リング内径を広げて効率アップも狙いましょうという作業を自分の所では段付き修正などと言っています。

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作業の内容的にはリングとシリンダーの繋ぎ目を研磨して繋がり部分で発生する吸排気に於ける流速抵抗などを低減する目的で行いますが、イラストのように単純にリング部分だけを削って繋がりを合わせようとすると結果的に繋がり部分の角度がきつくなり乱流が発生して有効面積が稼げませんので、ポートのスロート(喉)部分以降のポート容積を出来るだけ増やさないように注意しつつ、シリンダー〜リングをRで繋がるように研磨をします。

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またリングの内径を広げ過ぎると圧入してあるリングの張力が失われてリングが脱落するなどのリスクも伴いますので、無闇やたらに削るのだけは避けた方が良いと思います。

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そしてご自身でやってみたいなぁ・・・という方の為に研磨の際の注意点ですが、凸部分を消したいなどの狙いのある場合以外はリューターはゆっくりでも常に動かして削りムラを作らないように、そして前後に動かすと道路に出来た轍のような溝状のラインが出来てしまい、その線を消すのは非常に厄介ですので、

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リューターを動かす場合には小刻みに振り子のように左右に動かすようにして削っていくとムラが出にくく比較的均一に仕上げられるかと思います。

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またやりがちな例として、手前の接触面ばかりに気を取られてしまうと、先端で内壁を傷付けていた・・・。なんて事もありますので、先端が尖ったタイプの超硬バーを使用する際には注意した方が良いかと思います。

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ちなみにこの程度の傷であれば消すことは容易ですが、あまりにもガッツリと傷を付けてしまった場合には無理に傷を消そうとして削り過ぎるとそちらの方が問題ですので、やってしまった場合には諦めも肝心かと思います。
それと研磨をすると当然アルミの削り粉が発生しますがかなり大量に豪快に作業場所を汚しますので間違っても室内では行わない方が良いと思います。
また削り粉は細かく鋭利でトゲとして良く肌に刺さりますので、小さなお子さんやペットの近くでは絶対に行わない方が良いかと思います。

ということで「何かとリスキーですので全て自己責任でお願いします!w」ということで、ここから作業の流れをこのポートを使ってご紹介します。
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先ほど傷を付けてしまったポートですが、まずは荒削りが得意なスパイラルタイプの超硬バーを使用して大体のポートデザインに仕上げますが、この後、最終仕上げまでにまだまだ研磨を続けて肌質を整えますので、この段階で限界まで削らずにその分の削りシロは残しておきます。
またこの時にアルミで出来たシリンダーと耐摩耗性に特化した特殊合金のシートリングでは削れる速度が全く違いますので、両方を同時に削っているつもりでも実際にはシリンダー側のアルミ部分ばかりが削れて陥没してしまいますので、まずはリング側をある程度先に研磨をして、その後に繋ぎを合わせるようにサクッとシリンダー側を研磨すると比較的少ない研磨量で済みます。

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続いてクロスカットタイプの超硬バーでさらに仕上げていきますが、先ほどのスパイラルカットの超硬バーは非常に削りやすくサクサク削れてしまう分、削り痕が粗く調節が難しいので、ゆっくり削れて削り痕も比較的仕上がりに近いこちらのクロスカットタイプの超硬バーを使用して荒削りの中仕上げを行います。
ちなみにリングで赤く印した部分がバルブとの当たり面となりますが、間違えてこの赤い線の部分に傷を入れてしまうとシートカットのやり直し、傷が深い場合にはシートリングの入れ直しなどの作業が必要となりますのでくれぐれも傷を付けぬよう作業を進めます。

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そして中仕上げが終わったら荒削りで出来た小さな凸凹をこの ホルダー装着タイプのバンド#120〜#320で整えて最終仕上げに向かいます。

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そして先ほどのバンドタイプで届かなかったR部分などの仕上げにこのタイプのフラップホイルを使用しますが、

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新品ですと角が立っているのでR部分に上手く馴染まないのでこのような使い古しで先の丸くなった物を使用して仕上げると結構調子が良いのでお勧めです。

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そして最後に好みに合わせてアルミの丸棒に切れ目をいれた棒に耐水ペーパーを挟んでオイルを付けて磨けばご覧のような仕上げが可能です。が、内壁を綺麗に仕上げても荒く仕上げても実際には内壁付近の流速は壁に近ければ近いほど流速速度が落ちますので仕上げによる差は殆ど無いと言われています。

ということで、今回ご紹介した作業の流れは基本的な流れとしてで、形状などは人それぞれの個性や考えによると思いますので、バルブ当たり面への形状などは直接触れません。
そして以前はポート研磨をしても効率は差ほど変わらないという流れでしたが、現在ではポート研磨をすることによって効率の向上が見込まれるようになってきました。
※ 正確にはポート研磨を行うことで燃焼室内壁に向けて良い流入の流れを作り、流入した混合気の渦(タンブル、スワール)を向上させて燃焼効率を上げると言う思想です。
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特にポート研磨は日本語で検索してもあまり数値の変化的な試験記事はヒットしませんが、言語を変えるとこれだけ多くの情報が手に入りますので色々なワードで検索してみるのも面白いと思います。
特に海外のフォーラムやラボなどではポートのCFD解析や実際にアクリルにCNC加工を施して実際のフローをスーパースロー再生を使って目視で見れるようにしてくれているところなどもあります(面白かったので紹介したかったのですが、動画を見失いました。。。)

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またベンチュリー効果を利用するキャブ車と燃圧を利用するインジェクション車でも考え方や出来ることが変わりますが、面白いところではロングストロークとショートストロークでも上流と下流での圧力変化などの脈動振幅などを考慮して形状を変えるという発想もあるのですが、さらに面白いことにタイの方では以前に日本国内でも良いとされてその後やはりダメだったと廃れたコブラポートに似た形状が現在流行っているようです。

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4 Piston B16 CNC
そして今ではCNC加工による高度な機械加工のポートなども多く出ていますが、一番採用してそうなmoto GP やF1 など最先端を行くマシンのポートの仕上げは未だにハンドメイドが支流なようで、設計段階で既に完全な形状なのでサラッと仕上げればいい・・・なんて事はクランクシャフトの仕上げに機械加工で1週間も掛けるあの世界じゃ考えられないのでやはり職人の感に勝るモノは無いってやつでしょうか・・。

またこちらのフォーラムにB.A.Rホンダ時代のRA004E V10 NAエンジン?のマニアックなカットモデルや貴重なデータが搭載されています。
英文ですがグーグルの翻訳機能で大体読めると思いますので1世代前のエンジンとはいえ燃焼室のポート付近を中心にラジアルバルブ仕様のカムなど滅多に見れないモノも載っていますので興味のある方は見てみてください。
http://www.f1technical.net/forum/viewtopic.php?f=4&t=15385

ということで、眠くていい感じに話が纏まりませんので次回の道具編に続きます・・・




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この記事へのコメント

1. Posted by エンドルフィン   2017年03月31日 05:55
5 なんかこうゆう記事好きです!てかどの記事読んでも為になりますし楽しいですな( ´Д`)y━・~~
2. Posted by 砂粒   2017年03月31日 13:33
分かり易く図解いり!
リンク先の画像、結構バリ?残ってる部分見えるような•••

技術の発達で使う道具も変化するんですね。
内部はコーティングって出来るのですか?
出来たら、更にツルツルになりそうだと思ったりw
3. Posted by Gabu   2017年04月01日 03:37
>エンドルフィンさん

ありがとう御座いますm(_ _)m
以前の記事では内容が古くなってしまっていたので新しく更新してみました。
時代と共にどんどん道具が良くなるのでポート加工の時間もだいぶ短縮できるようになりました^^
4. Posted by Gabu   2017年04月01日 03:41
>砂粒さん

お疲れ様です^^
多分、バリに見えるのは鋳物の砂肌だと思いますが、カットモデルなので見えますが通常だと見えない部分なので仕方ない部分かもしれません^^:

内側のコーティングは排気側だけ出来ないものかと考えています。
排気側にコーティング出来ればかなりの時間短縮になるので実験あるのみです^^
5. Posted by oneoff   2017年04月06日 18:01
ぶはは!これ見てやるトンチキ野朗おるんですかwww

ほぼ100%やらかしますね!そしたらガブさんとこに.......

なるほど!営業っすねw
6. Posted by Gabu   2017年04月08日 02:43
>one offさん

それですねw これからは金太郎と呼んでくださいw
そして稼いだお金はone offさんの自転車のペイント代に消えていくと・・・。

というのは冗談ですが、ここ最近「自分でやる場合に・・・」と、この手のお問い合わせを何件か頂いていたのと、ポート研磨記事の古い記事へのアクセスがいまだに多く、古いネタを参考にしてもらいたくなかった事もあって説明も兼ねて今回紹介させてもらいました^^

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