2022年03月16日

2022年03月16日

三者三様のFCRキャブレター作業

昨年までキャブレター関係の記事が多かったので、またキャブかよ!と思われるのが嫌で少し書くのを止めようと思ったら、あっという間に3月も中盤に入ってしまいました。。。

今回は昨年末に作業をご依頼頂いた3機のFCRキャブレターの紹介ですが、
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1機目はこちらのブラックボディのFCRキャブレターで、

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作業内容はブラックボディのFCRキャブレターをセラコート処理にて派手渋な真のブラック仕様に変更をする作業をご依頼いただきました。

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そして残すもう2機のうちの一機は、同じくセラコート処理によるブラック仕様のオーダーと、もう一機はほぼレストアを兼ねたオーバーホールの作業メニューにてご依頼をいただきました。

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で、まずはオーバーホールをご依頼いただきましたこちらの25年近く前に販売された初期ロッドのFCRキャブレターですが、某有名ショップさんで以前にオーバーホールをお願いするも、オーバーホール作業から戻ってきたら、作業を依頼する前の状態よりもキャブレターの状態が悪くなって戻ってきた・・という事でお問い合わせを頂いての入庫ですが、

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FCRキャブレターに限って言えば、オーバーホール作業で入庫する個体の一定数が以前にショップさんでオーバーホール作業を行った個体で、作業から戻ってきて車体に付けてエンジンを掛けたら絶不調になっていた・・・。という話ですが、記載されているショップ名を見るとキャブレターのオーバーホール作業を売りにしているショップさんの名前も有ったりで、純正キャブレターと同じノリでキャブレタークリーナーなどを吹き掛けてしまっているのかな・・・と。
FCRキャブレターに限って言えば、非分解部分を分解した事が無いとあそこに重要なOリングが入っているなんて想像もしませんのでショップさんも悪気は無いんですよね、むしろお客さんに喜んでもらおうとしっかりと綺麗に洗浄をしようとして、エア通路などにケミカルを入れているわけであって、決して不調になる事が故意ではないのが悲しいところです。。。
ちなみにたまぁに洗浄剤は何を使っているのか?と聞かれますが、アルマイトなどの掛かっていない素地のFCRキャブレターや純正キャブレターに関しては、基本的にウェットブラストと超音波洗浄機を使って汚れを落として、最後にママレモンで洗う程度でケミカル類は一切使っていません。

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こちらのTDMR( TMR)キャブレターのように独特な肌の質感を持っているキャブレターの場合にはウェットブラストは当てられないので、

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そのような場合にはこのようなキャブレタークリーナーを使用して、

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ドボンと漬け込み洗浄をしますが、

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ご覧のようにOリングを侵しますのでOリングなどが取りきれないFCRキャブレターやTMRには不向きでお勧めは出来ませんが・・・洗浄に関してこの辺はあまり深く書くと他の方の作業にケチをつけてしまうような話になってしまうので話を戻しまして、

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で、こちらのキャブレターは20年以上使われているだけあって、錆、腐食、ゴムの劣化など、外見は非常にヤレていて、

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キャブレター自体も漏れ出していたガソリンでベタベタです。。。

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ただ中身は一度オーバーホール作業を実施しているだけあって非常に綺麗だったのですが、

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リップシールが本来の右の丸い状態からガソリンによってベロベロに溶けて見るも無残な状態になっていました。

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という事で、こちらのキャブレターは非分解部分のメンテナンスを行う為、非分解部分まで分解を行いました。

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ちなみに初期のワンウェイバルブの栓はジュラコンのような素材で出来ているのですが、製造から20年以上が経過し、経年劣化でクリアランスが緩くなり栓が内部で動いてしまっていたようで、このように綺麗な状態で取り出す事が出来ましたが、ワンウェイバルブが内部で自由に動いてしまっては意味が無いので、この辺も不調の一因だったようです。

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とりあえず抜けてしまった加速ポンプのワンウェイバルブは、オリジナルの真鍮製に打ち換えてリペアをいたします。

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そしてお次は沖縄からご依頼を頂きましたこちらのFCRキャブレターですが、ありがたい事に沖縄のオーナー様からご依頼を頂く機会が結構多く、

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沖縄=綺麗な海=潮風=錆? となってしまうのか、沖縄からご依頼を頂く個体の殆どが錆びや腐食に侵されてしまっています。

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そして今回の個体はキャブレター内部にも結構な錆の混入が見られ、オーナー様に車両側のタンク内の錆びのご確認をお願いしたのですが、

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ここで問題ですが、一番左のフロートバルブが新品で左4つが今回取り出したものですが、異常のある個体は含まれていますでしょうか?なんていきなり問題を出してみたり・・・。



正解は・・・






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全て異常ありで要交換です。理由は慢性的な錆の流入によってフロートバルブが偏摩耗していましたので、今回はフロートバルブも要交換となりました。※画像左が新品で右が当該部品です
個人的に視力が悪く、この手の偏摩耗は肉眼では見抜けないので電子顕微鏡で確認して初めて気が付きます^^:

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ちなみにこのフロートバルブに付ける特殊クリップも右の新品に対して左のクリップは変形をしており、フロートバルブが自由に回転出来ない状態でしたので、細かな部分で結構見逃しがちなポイントですが、要交換です。

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そして今回はキャブレターを分解して各Oリングの状態の悪さが分かったので、現時点では問題ありませんでしたが、綺麗に施工した後も長く良い状態で乗って頂く為、予防的に非分解部分のOリングも交換するご判断をオーナー様からいただきました。

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という事でオーバーホール作業の個体とセラコート処理の個体をそれぞれ分解して、

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オーバーホール作業の個体はボディなどが年式相応に汚れているので、どの程度綺麗に仕上げるか磨き仕上げのチェックを行って、

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新品以上に綺麗な状態に(願望)なるように3日かけて各部品をクリーニングして、錆や腐食を可能な限り除去。

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そして残りの2機はセラコート処理にてそれぞれご希望の仕様へと変貌をさせて・・・、

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あとは淡々と組み付けです。

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そしてオーバーホール作業のFCRキャブレターには、当時初期型には付いていなかったFCRのステッカーをサービスで貼らせていただいて、

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三者三様のFCRキャブレターの作業が完了しました^^

まずはオーバーホール作業のFCRキャブレターですが、
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25年近く前に販売された当時よりも綺麗に!を目指してオーバーホール作業というよりもレストアをさせて頂きました。
また、細かな初期型と現行の相違点などを現行タイプに変更させていただいて、お返しして車体に取り付けて試乗インプレを頂いたところ、気になっていた不調箇所も解消し「久しぶりに乗ってて楽しい」とのお言葉も頂けて嬉しかったです^^

そしてお次は沖縄県からご依頼を頂きましたFCRキャブレターですが、
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元々有った錆や腐食を磨き落として、表面に露出する真鍮部品以外の金属面はほぼセラコート処理にて2色のブラックを使い分けて仕上げさせて頂きました。
今回使用したセラコートは密着性に優れているので、錆や腐食の発生を通常時よりも抑える効果もありますので、塩害の多い環境でも良い状態をキープしてくれると思います^^
こちらのオーナー様にも仕上がりを喜んでいただけたので心の中でガッツポーズをして良い年末になりました^^

そして最後はFCRキャブレターのブラックボディベースのブラック仕様ですが、
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こちらのFCRキャブレターも真鍮以外の露出する金属面は全て施工対象とさせて頂いて、派手シブな艶有ブラック×ゴールドで仕上げさせていただきました^^
こちらの施工対象として渦巻ファンネルの施工が何気に大変でしたが、苦労した甲斐も有って渦巻ファンネルの艶感が個性的で凄く良い作品が完成しました♪
そしてオーナー様にも「最高の仕上がり」と満足して頂けたので、ホッとすると同時に職人冥利に尽きるなぁ・・・としみじみと感謝をさせていただきました^^

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余談ですが、完成画像を撮っているこの時が一番幸せです^^
この度はご依頼を頂きまして誠にありがとう御座いました。

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そして入れ替えでその次に控えているこちらの4AG用のFCRキャブレターですが、以前にもFCRキャブレターを一機製作させていただいた業界では有名な四輪のカスタムビルダー様からのリピート製作でのご依頼ですが、ド派手に変身します^^
その仕上がりは次回に・・・。