2009年04月11日

ピストン修正

来る日も来る日もこのネタばかりですいません。
たまにはペイントネタでも・・・と思っても12Rネタが詰まってしまいリアルタイムで作業記事を作成しているので更新を怠ると作業に記事が置いていかれそうなので必死に更新を続けています。。。
それでも細かい作業内容などは省いているので ”あいつここ見落としてんじゃん”という部分があるかもしれませんが、多分拾っていると思いますので大目に見てやってください^^:

IMG_1627
そして今回の作業はピストンの重量合わせですが、各ピストンの重量を測ったところ±1g以内と、どうせならあんなにいっぱいピストン作ってるんだから極力重量の近いモノをセットで入れてくれれば良いのに・・・と思うのですが、JEでは許容誤差1gで取っているのでしょうか・・・?

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ちなみに材質が違うので比重も多少違いますが、アルミで1gというとちょうど1円玉が1g分のアルミで出来ています。余談ですが、10円玉は4.5g で100円玉が4.8g、500円玉が7gですが、相当傷が付いていない限り、使い回された53年硬貨と新品硬貨で測ってみても重量差が発生しないのはさすがです。なのでたまーにポケットから硬貨を取り出しチェックバランサーとして使用したりしてます^^:
そして話しを戻してピストンのバランス取りですが、まず一番軽いモノに対して一番重いモノを合わせる形でピストン裏側のピストンピンの入るピンボス裏周辺やスカート裏(一番下端)の圧力の比較的掛からない部分を強度を落とさない程度に研磨し重量を減らしますが、1gを削るのってあっと言う間で簡単そうに思えても、元々の形状が無駄の無い作りで設計されているのでこれが実際にはかなり気が遠くなる作業だったりします^^;
なので気分的にかなり削ったつもりで秤に載せても実際には0.3gしか減っていなかったりでもう削る余地があまりないんですが・・・という状況に陥りますので軽量加工までは素手では難しいです。。。

piston
そんなこんなで重量差を0.1g以内に収めるのですが、よく「何のためにバランスを取るのか?」また「たった1gの差で何が変わるのか?」と聞かれる事が多いのですが、これはみんながそうしているからやっている訳ではなく、ちゃんとした意味を持って作業をしているのですが、単純に見て静止状態で1gであっても動いている時の加速、減速G下では1gがそのまま1gではないと言う事です。
ピストンは行ったら行きっぱなしではなく高速で往復運動を繰り返していますので上昇⇒下降⇒上昇⇒下降のスタート〜ストップを繰り返し、単純に12Rのエンジンでレッド手前11000rpmまで回した時に静止状態での1gが大よそ最大で3.7Kgに達する計算になりますので静止状態で1gでも実際に動いている時に働く力で考えると実に3700倍強の力となりますので、たった1gを合わせる事にも大きな役割があることが解ってもらえると思います。そして高速回転している間に何回も何回も永遠にその気筒だけ余分な力が加わりますので全体的なバランスとして見ると良くない事も解ると思います^^:
単純に素手でシャドーボクシングをした時と3.7Kgの鉄アレイを持って同じ行為をした時では全く負担が違い、下手をすれば肘の関節が壊れそうですが、ピストンやコンロッドなどもクランクと繋がって4気筒が一定間隔で動いていますので、1箇所の状態がどうであれ、他の気筒により強制的に動いていますので極端な力が掛かってもその力を打ち消す事が出来ず、コンロッドやコンロッドボルト、クランクにメタルなどいろいろな部分に負担を広げます。
逆を言えばピストン全体では相当な重さ=負担になりますので軽量する際に削る部分もかなり神経質になります。また、ピストン単体でもリセス溝の大きさでINとEX側では重量差が多少出ますのでその辺りも考慮して極端な配分にならぬよう研磨するように心掛けています。

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そして軽量化やバランスとは別に表側も全体的に指でなぞってみて製造時のバリやエッジが確認された場合は#2000のペーパーを使って、その分部をセコセコ手で研磨し角を丸くしておきます。
画像右が研磨後で左が元の状態ですが、今回は慣らしがまともに出来るのか微妙なのでその辺りの初期段階を考慮した上で全体的に仕上げる方向で調整しています。
※ここを研磨すれば慣らしが要らないとかそういう意味ではありません、慣らす前にこちらである程度慣らしてしまおうと言う個人的な取り組みです。

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そしてピストンの加工終了後にフリクションロスの低減と疲労強度向上を目的にピストン及びピストンリング、ピストンピンに対してWPC × モリブデンショットの複合処理加工を施します。
このWPC加工は単純にいうと金属の表面に非常に細かい微粒子の金属で出来た球体をサンドブラストのように圧力を掛けて噴射し金属の表面に非常に細かいディンプル(凹)を無数に形成してオイル溜りを作ると同時に、ショットピーニングのように金属の表面を叩いて密度を上げて強度(硬度)も向上させるという技術で、耐磨耗性の向上や摺動抵抗の減少、疲労寿命の延長などなど他にもいろいろありますが、実際の効果は?というと、何もしていないピストンリングにコンロッドを付けて一定の位置から手を離すと振り子のように動く回数が4回で、WPC処理をしたピストンリングに同じように取り付けて実験してみると7回まで運動が延びました。この実験ではピストンピン及びコンロッド側にオイルを付けずドライな状態でテストしたものですが、WPCにより表面の荒さが無くなったことと無数のディンプルで実際に当たる表面積が少なくなったことなどが影響しているのかもしれません。
また、通常パーツを手に取った時に付いた手の脂汚れなどはサッと拭き取ると消えますが、WPC処理をした部品ではかなりゴシゴシ拭かないと汚れが伸びてなかなか拭き取れません。
この状況もかなり細かいディンプルに脂が染み込んでいた為に拭き取りずらかったのだと思いますが、これが実際のエンジン内での油膜であればかなり心強い状態になってくれる事と思います^^
以前にご紹介したR1-ZのエンジンにもこのWPC加工を部分的に取り入れて施しましたが、トルクの薄い
2st などにもかなり有効ではないかと思います。
※WPC処理を行ってもクリアランスは殆ど狂いません。

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ちなみにこちらのピストンピンですが、左画像の右からZX12R純正、ZX14純正、ZX12R用JE製と並べてみましたが、一昔前のごついピン形状と違い、純正でもNSR250などのように軽量化のためにしっかりテーパー加工がされており非常に好感触な作りとなっています。
それにしてもZX14のピンは12Rよりもコンパクトに作られていますよねぇ・・・^^:
ちなみに重量が一番重いのは当然のように12R純正(89.6g)なのですがw、次に重いのは・・・ZX14純正の83gで、かろうじて-1g差の82gでJE製が最軽量と毎回ZX14と比べる度にその差に悲しくなりますね^^:



akane380 at 00:44│Comments(3)TrackBack(0)│ │DRAG RACE 製作記 

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この記事へのコメント

1. Posted by S14まさ   2009年04月13日 22:55
5 実は自分も1gで何かかわんのか?という人間でした…
1グラムの脅威を知りましたよ^^;
いつも勉強になります!
それにしてもコンロッドの実験結果、すごい興味あります!
そこら辺で売っているサンドブラストで処理して「WPC加工」と謳ってしまっても良いものなのでしょうか…
さすがにダメですかね^^;
こういう話しを知ってしまうと実際やってみたくなってしまいますね^^
WPC加工ってどれくらいの金額で施工してもらえるんですか?
ピストンピンは旋盤で極肉薄にはさすがにしないですか?(笑)
次回も更新楽しみにしてますよ!!!
2. Posted by ヘミバード   2009年04月13日 23:08
やはりブログはちゃんと更新しないといけませんよね^^;最近更新をサボってリアルタイムじゃなくなってきてます。

以前からWPC加工って効果あるのかな?と疑問に思ってたんですが、加工前と加工後のクランクの振れ方、大きく違うんですね^^効果大ですね
3. Posted by Gabu   2009年04月14日 11:13
>S14まささん

たった1gの話は以前からよく人に聞かれる事が多いのですが、実際に説明してもエンジン内部で状況ごとのシチュエーションが想像出来ないと現実的な話とは思えないですよね。
以前のF1エンジンのように19000rpmでフルに回っているエンジン内部のピストンが上下するごとに0kmになる瞬間があるなんて信じがたいですからね^^:
ちなみにWPC処理はサンドブラストと原理は一緒のようですが、噴出圧力や扱うビーズ?のサイズが一般的では無いようですのでさすがに無理かと・・・^^:
また料金や技術説明などはエヌ・イーさん

http://www.ne-jp.com/wpc/

のHP上で確認できます^^


>ヘミバードさん

自分も最近、作業に没頭して画像を撮り忘れたりで結構飛ばしてしまった部分もありますが、それでもまだまだネタが溜まってます。。。
WPC処理は以前からあった加工らしく、比較的最近になってバイクや車の部品にも応用された技術らしいのですが、実際に処理した物を手に取ってみると、しっとりとした変化が凄く良く分かるのでお勧めの加工です^^ 

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