P-202 アークティックブラック
2017年02月10日
P-202 アークティックブラック
間違えて先日の記事を消去してしまいました。。。
砂粒さん、one offさん、せっかくコメント頂いたのにすみません。。。
で、差し替えのネタじゃないですが、ちょくちょくお問い合わせを頂いた際に説明に使える参照記事が欲しいな。ということで、セラコートの製品の中で放熱性に特化したP-202 アークティックブラックというコーティングの施工手順と色味をこの機会に参考程度にアップしておきます。
まず放熱性に特化したと言われてもどの程度効果があるのか?という話ですが、それを説明する前にwikipedia より、
〜 熱放射 〜
熱を運ぶ過程には大きく分けて次の三通りがある。
熱伝導
移流(対流)
熱放射
熱伝導は物体が移動せず直接触れ合うことにより、移流は流体の流れを媒介させることにより間接的に熱を伝える。どちらも熱は熱振動のまま伝わってゆく。それに対し熱放射では、輸送元の物体が電磁波を出し、輸送先の物体がそれを吸収することによって熱が運ばれる。この過程だと、二つの物体のあいだに媒介する物質がなく、真空であったとしても熱が伝わる。
そして今回のP-202 アークティックブラックの場合は熱放射を利用した放熱性ということで、
放射率(ほうしゃりつ、英: emissivity)は、物体が熱放射で放出する光のエネルギー(放射輝度)を、同温の黒体が放出する光(黒体放射)のエネルギーを 1 としたときの比である。0 以上 1 以下の値(無次元量)であり、物質により、また、光の波長により異なる。
キルヒホッフの法則によると, 放射率εと吸収率αは等しい:ε = α
また、エネルギー保存則から、ある波長の光が物体に当たった時、反射率ρ、透過率τ、吸収率αの和は 1 になる:ρ + τ + α = 1
もしも、物体が十分に厚ければ、透過率τは 0 になる。するとρ + α = 1となる。
この式に上記のキルヒホッフの法則を使うと
ρ = 1 - ε
となる。
すなわち、放射率εが大きければ反射率は小さく、逆に小さければ反射率は大きい。このことから、光をなるべく反射するには、放射率の小さな素材で物体表面を覆えばよいということがわかる。
例えば、消防士の着る耐熱服の表面が金属でコーティングされているのは、金属の放射率が広範囲の波長において低い(反射率が高い)ためである。高温な物体から照射される熱放射を反射することにより、消防士の体を高温から守るのである。
よく分かって頂けましたでしょうか?
今ひとつ理解できなかった方はご安心ください。自分もですので。。。
とりあえずこの記事中では ” 1 ” に近いほど熱放射率が悪く、 ” 0 ” に近いほど熱放射率が良いという程度の認識で問題ないと思いますが、
一般的な例として
アルミニウム 0.02−0.1
鉄(酸化面) 0.5-0.9
ゴム 0.95
クロム酸化物 0.81
一般塗料 0.80〜0.95
油性ペンキ、 0.92〜0.96
水 0.92〜0.96
人体 0.98
といった感じなのですが、P-202 アークティックブラックの熱放射率は
P-202 アークティックブラック 0.73
と施工を施してもなお鉄の酸化面と同レベルの放射率を誇ります。
※ セラコートの中には色によっては 0.44とさらに放射率の高いモノも存在していますので、うちで放熱加工を施工する場合には今回のように色の希望が無い限りは放射率優先の配色となります。
※ P-202 アークティックブラックの耐熱温度は260℃ となりますので、エキゾーストなど高温になる部分への施工は推奨しておりません。
という事で実際の作業の流れですが、
こちらのシリンダーは昨年ご依頼を頂いて納めたモノになるのですが、ハーレーのシリンダーで夏場の熱対策にと、別途用意した社外のシリンダーヘッドの結晶塗装のブラックとのバランスを考えてP-202 のアークティックブラックをご指定頂いての作業となったのですが、
一見、アルミ地のようなシリンダーも角をカリカリと爪で引っかくとパリパリと樹脂のような分厚い塗膜がポロポロと。
で、この如何にも熱を外に伝えず篭らせてしまいそうな分厚い塗膜の上から施工をしても全く意味が無いので、まずはこの分厚い塗膜を剥離剤を使って綺麗に剥がします。
そして綺麗に剥がし終えたら一度綺麗に洗浄をして高温の炉にて焼き飛ばしを行い・・・
今度はマスキングをしてサンドブラストにて肌の表面に凸凹を付けて表面積を稼ぎ放熱効果を上げる肌質に整えます。
で、本当は一番放熱性が良いのはこのままの状態なのですが、現実的にはアルミや鉄は素地のままでは酸化し腐食や錆びが発生してしまいますので、そのままでは途端に放熱性が悪くなってしまう事からそれを防ぐ為に仕方なく塗装をして表面を保護します。
ですので本来なら塗装したくないけど保護しなきゃならない=出きるだけ放熱の抵抗にならぬよう極薄の塗膜で保護をするようにと うちでは極小口径のエアブラシを用いてフィンの一枚一枚を時間を掛けて仕上げています。(実は企業秘密だったり・・・)
なのでうちでラジエターやオイルクーラーを施工するとメチャクチャ時間が掛かる分、若干割高となります・・・。
そして塗りあがったシリンダーを175℃に熱した炉で一時間焼付け作業を行ったら・・・
P-202 アークティックブラックの施工が完了です♪
色味的にはブラックと言うよりかは白味の強いダークグレー系の色味となります。
ただ、今回はこちらの社外のシリンダーヘッドに施された結晶塗装とのバランスをオーナーさんが一番気にされていたのですが、仕上がり的に色味も近く問題ないレベルとのことで納品をさせていただきました^^
また、こちらのP-202 アークティックブラックは塗膜を極薄にしても密着性や引っかき硬度、5%塩水腐食耐久性などは他のセラコート同様高い次元の性能を持ち合わせておりますので極薄の塗膜だからといって簡単に剥がれたり錆びや腐食に侵される心配はありません。
ということでP-202 アークティックブラックの紹介でした^^
次回は同じくお問い合わせの多い耐熱温度1200℃のグレーシャーシリーズを紹介します。
それにしてもこのハーレーの燃焼室はまた一段と綺麗でした。。。
砂粒さん、one offさん、せっかくコメント頂いたのにすみません。。。
で、差し替えのネタじゃないですが、ちょくちょくお問い合わせを頂いた際に説明に使える参照記事が欲しいな。ということで、セラコートの製品の中で放熱性に特化したP-202 アークティックブラックというコーティングの施工手順と色味をこの機会に参考程度にアップしておきます。
まず放熱性に特化したと言われてもどの程度効果があるのか?という話ですが、それを説明する前にwikipedia より、
〜 熱放射 〜
熱を運ぶ過程には大きく分けて次の三通りがある。
熱伝導
移流(対流)
熱放射
熱伝導は物体が移動せず直接触れ合うことにより、移流は流体の流れを媒介させることにより間接的に熱を伝える。どちらも熱は熱振動のまま伝わってゆく。それに対し熱放射では、輸送元の物体が電磁波を出し、輸送先の物体がそれを吸収することによって熱が運ばれる。この過程だと、二つの物体のあいだに媒介する物質がなく、真空であったとしても熱が伝わる。
そして今回のP-202 アークティックブラックの場合は熱放射を利用した放熱性ということで、
放射率(ほうしゃりつ、英: emissivity)は、物体が熱放射で放出する光のエネルギー(放射輝度)を、同温の黒体が放出する光(黒体放射)のエネルギーを 1 としたときの比である。0 以上 1 以下の値(無次元量)であり、物質により、また、光の波長により異なる。
キルヒホッフの法則によると, 放射率εと吸収率αは等しい:ε = α
また、エネルギー保存則から、ある波長の光が物体に当たった時、反射率ρ、透過率τ、吸収率αの和は 1 になる:ρ + τ + α = 1
もしも、物体が十分に厚ければ、透過率τは 0 になる。するとρ + α = 1となる。
この式に上記のキルヒホッフの法則を使うと
ρ = 1 - ε
となる。
すなわち、放射率εが大きければ反射率は小さく、逆に小さければ反射率は大きい。このことから、光をなるべく反射するには、放射率の小さな素材で物体表面を覆えばよいということがわかる。
例えば、消防士の着る耐熱服の表面が金属でコーティングされているのは、金属の放射率が広範囲の波長において低い(反射率が高い)ためである。高温な物体から照射される熱放射を反射することにより、消防士の体を高温から守るのである。
よく分かって頂けましたでしょうか?
今ひとつ理解できなかった方はご安心ください。自分もですので。。。
とりあえずこの記事中では ” 1 ” に近いほど熱放射率が悪く、 ” 0 ” に近いほど熱放射率が良いという程度の認識で問題ないと思いますが、
一般的な例として
アルミニウム 0.02−0.1
鉄(酸化面) 0.5-0.9
ゴム 0.95
クロム酸化物 0.81
一般塗料 0.80〜0.95
油性ペンキ、 0.92〜0.96
水 0.92〜0.96
人体 0.98
といった感じなのですが、P-202 アークティックブラックの熱放射率は
P-202 アークティックブラック 0.73
と施工を施してもなお鉄の酸化面と同レベルの放射率を誇ります。
※ セラコートの中には色によっては 0.44とさらに放射率の高いモノも存在していますので、うちで放熱加工を施工する場合には今回のように色の希望が無い限りは放射率優先の配色となります。
※ P-202 アークティックブラックの耐熱温度は260℃ となりますので、エキゾーストなど高温になる部分への施工は推奨しておりません。
という事で実際の作業の流れですが、
こちらのシリンダーは昨年ご依頼を頂いて納めたモノになるのですが、ハーレーのシリンダーで夏場の熱対策にと、別途用意した社外のシリンダーヘッドの結晶塗装のブラックとのバランスを考えてP-202 のアークティックブラックをご指定頂いての作業となったのですが、
一見、アルミ地のようなシリンダーも角をカリカリと爪で引っかくとパリパリと樹脂のような分厚い塗膜がポロポロと。
で、この如何にも熱を外に伝えず篭らせてしまいそうな分厚い塗膜の上から施工をしても全く意味が無いので、まずはこの分厚い塗膜を剥離剤を使って綺麗に剥がします。
そして綺麗に剥がし終えたら一度綺麗に洗浄をして高温の炉にて焼き飛ばしを行い・・・
今度はマスキングをしてサンドブラストにて肌の表面に凸凹を付けて表面積を稼ぎ放熱効果を上げる肌質に整えます。
で、本当は一番放熱性が良いのはこのままの状態なのですが、現実的にはアルミや鉄は素地のままでは酸化し腐食や錆びが発生してしまいますので、そのままでは途端に放熱性が悪くなってしまう事からそれを防ぐ為に仕方なく塗装をして表面を保護します。
ですので本来なら塗装したくないけど保護しなきゃならない=出きるだけ放熱の抵抗にならぬよう極薄の塗膜で保護をするようにと うちでは極小口径のエアブラシを用いてフィンの一枚一枚を時間を掛けて仕上げています。(実は企業秘密だったり・・・)
なのでうちでラジエターやオイルクーラーを施工するとメチャクチャ時間が掛かる分、若干割高となります・・・。
そして塗りあがったシリンダーを175℃に熱した炉で一時間焼付け作業を行ったら・・・
P-202 アークティックブラックの施工が完了です♪
色味的にはブラックと言うよりかは白味の強いダークグレー系の色味となります。
ただ、今回はこちらの社外のシリンダーヘッドに施された結晶塗装とのバランスをオーナーさんが一番気にされていたのですが、仕上がり的に色味も近く問題ないレベルとのことで納品をさせていただきました^^
また、こちらのP-202 アークティックブラックは塗膜を極薄にしても密着性や引っかき硬度、5%塩水腐食耐久性などは他のセラコート同様高い次元の性能を持ち合わせておりますので極薄の塗膜だからといって簡単に剥がれたり錆びや腐食に侵される心配はありません。
ということでP-202 アークティックブラックの紹介でした^^
次回は同じくお問い合わせの多い耐熱温度1200℃のグレーシャーシリーズを紹介します。
それにしてもこのハーレーの燃焼室はまた一段と綺麗でした。。。