高効率オリジナル燃焼室形状

2022年01月14日

V-MAX1200 高効率オリジナル燃焼室形状

昨年の5月にV-MAX1200でのゼロヨン9秒入りの目標達成以降、大変ありがたい事に何件かエンジン製作のお問い合わせを頂いております♪ ・・が、今後は一旦自分の車両製作をメインに活動を行いたいので、時間を要する新規のエンジン製作などは全てお断りをさせて頂いております。


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そこで、今回のV-MAX1200のエンジン製作で純正部品の応用で何処をどうやって純正から5割増し近くものパワーを出したのかを公開しますので、基本同じように作ればパワーは出ると思います!という事でオープンに記事にしてみます。

※注意
作業に関しては自己責任にてお願いします。
この記事の内容は効果を保証するものでは御座いません。


今回の記事の内容は経験則に基づいて独自の考えで取り組みを行った内容となっておりますので、一般的に世に出回っている考え方と違う部分などがあるかもしれませんが、ドラッグレースで一定の厳しい条件を元に国内記録を示した1つの結果を有効性有と捉えてご紹介させて頂きますのでご理解ください。



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V-MAX1200の記事の中でも何度も登場しているこちらのオリジナル整形を施した燃焼室ですが、今回のV-MAX1200のエンジン製作で重要視したのは
・充填効率の向上
・フリクションロスの低減

という基本的なもので、その中で一番の肝がこちらの燃焼室形状となります。
その他の詳細な仕様はこちらhttp://secretbase-racing.com/archives/2044373.htmlで紹介しています。

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画像向かって左が純正の燃焼室形状で、右側が今回オリジナルで整形し直した燃焼室形状となりますが、何となくパっと見は左の純正形状の方が圧縮も高くて性能が良さそうと感じられるかもしれませんが、

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一番初めに今まで触った事も無いV-MAX1200のエンジンを分解して画像の燃焼室と向き合って検証した際の個人的な印象として、

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35年前に設計されたVMAX1200において、このバルブ間のスキッシュエリアが張り出した燃焼室を採用したのはトルク型のエンジンに仕上げたかったからで、結果的に高回転は捨てているエンジンなのだろうなと。

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そしてタイムを狙うレース用のエンジンとして考えた時に酷く効率の悪い燃焼室形状をしているなぁ・・・と思うと同時に、経験的にこれはやり様によってはかなり化けるかも・・・。と、この時点で9秒台に入れて国内記録は残せそうだなぁとある程度結果が見えてきましたので、作業をお受けする際に以前のショップさんで散々な目に遭ったオーナーさんを安心させる為にも「9秒台に入れる事が出来なければ工賃など費用は要らない」と自信を持って作業オファーを受ける事が出来ました。

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そしてこの燃焼室形状の何が問題だったかというと、

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360°あるバルブの開口面積のうち半分近くが壁(一定のクリアランスが取れていないマスクエリア)に囲まれている事と、

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バルブ自体が燃焼室に陥没した形状をしているという点です。

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よくエンジンの性能を上げる際にリフト量の大きなカムシャフトなどを組み付けて吸入効率を良くしようと努力をしますが、

シリンダー加工
今回の取り組みでは単純にバルブが陥没しているシートリング付近の段差を削り取ってバルブのストローク面での開口面積の効率を上げる目的と、半周近くに渡る壁(マスクエリア)を無くしてバルブの効率の良い面積を稼ぐ目的の2つの取り組みを行いました。

バルブ説明
この燃焼室の加工を行う事で単純に純正対比でビッグバルブと同じ効果を生み、純正カムのままでリフト量を稼ぐハイカム効果を得る事が出来ます。

バルブ説明2
また、INTとEXHバルブ間の山を削る事でオーバーラップを開き始めから閉じ終まで効率的に使う事にもなりますので、充填効率が更に良くなりパワーも上がります。

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開き始め1丱螢侫隼の比較

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フルリフト時の比較

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フルリフト時別角度の比較
画像の加工後の燃焼室画像は加工テスト時の物なので本番用とは少し仕上がりが違うのですが、それでも何となく加工後の方がフロー効率が良さそうだと感じていただけるかと思います。
ここに更にハイカムやビッグバルブなどを組み合わせれば更に相乗効果が得られると思います。

※ちなみにいきなり削るのは危険です!
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画像は自分の12Rの燃焼室ですが、

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こちらは段差をそこまで積極的に削ってはいません。
理由はシリンダーと燃焼室のボア径がほぼ同じで外に広げられない事と、バルブとピストンの距離的な関係から面研が行えず、削って失った分の圧縮を回復する事が出来ないからです。
なので自分の12Rではハイカム+ビッグバルブ仕様にて充填効率の向上を狙っていました。
なので何でもかんでも削ってしまうとエンジン自体が使えなくなってしまう事もありますので、全体的なトータルバランスで加工の算段を立ててください。

燃焼室容積の測り方に関しましてはこちらで紹介しております。
http://secretbase-racing.com/archives/cat_50920.html
※ 燃焼室容積の計算方法はgoogle先生でお調べください。

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ベストなのは今回のように部品取りのエンジンを用意して、テスト機を作って確かめるのが一番かと思います。

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今回は事前にジャンクのヘッドを用意して、それを使ってどの位削れるか? またどの位削れば理想の形状になるか? 理想の形状になった場合に必要な全体の容積を粗方計算しておいて、その加工後の容積に合わせてピストントップ容積などを合わせていましたので、今回は可能な限り燃焼室形状をシンプルで一般的なレーシングエンジンで用いられるペントルーフ形状に変更しつつ、純正バルブにおいてバルブの有効面積を増やしつつ、圧縮比も元々の10:1から大幅に増やしています。

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燃焼室を整形すると当然、燃焼室内の容積が増えてしまうので圧縮比が落ちてしまいます。
自然吸気エンジンで圧縮比が落ちてしまう事は致命的な事ですので、失った分の圧縮比を回復させますが、一般的にはヘッド側を面研して圧縮比の調整を行いますが、燃焼室で失った圧縮+更に増やしたい分の圧縮を得る為に大きくヘッドを面研してしまうと最悪の場合にバルブとピストンの距離が近くなりぶつかってしまい使いモノになりませんので、今回はヘッド側の面研は最小限の0.1mmに抑えて、シリンダー上面を2.2mm面研する事で低下した圧縮比を回復させつつ、目標の圧縮比になるよう効率のよい方法を取っています。

面研
分かり易く図にするとこのような感じですが、直径の大きなシリンダー側を研磨する事で面研量を最小限に抑える事が出来ます。
※ バルブタイミングのズレ以外にもノックピン穴が浅くなってしまったりマウントの位置がズレるなど各部に対策が必要です。

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ポートに関しては、今回のVMAX1200のポートのように寝ていて内向きなポートは効率が良い訳ではないもののタンブル流が強い傾向があるイメージなので、

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純正のDポートを維持したまま分岐後の容積を合わせつつ断面積変化を意識して仕上げてありますが、

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流速の落ちる壁面付近の仕上げはコスパ重視なので簡単な仕上げに留めています。

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こちらの状態は1シーズンレースと練習走行などで使用した時の分解時の燃焼状態ですが、

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インマニを改造してセットしたFCRキャブレターのセッティングをしっかり取って燃焼室内でコンパクトな燃焼を行う事が出来ているので、一点集中で燃焼圧力も強く、力のあるエンジンに仕上がっています。

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ただ、その分負荷も強く掛かっているのでライフサイクルは極端に短くオーナーさんには長く持たない事は伝えてあり、既に許容範囲をオーバーしてそろそろブローするかもしれませんねと話してはいるのですが、それまでに更にベストを更新出来るのか?も楽しみです。

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何度か書いていますが、高額な部品をただ買って組んでも性能は活かせません。
サーキット走行でのタイムアップで必要な事はただ漠然とお金を掛けるのではなく、現状を分析してしっかり必要な所に対策を行う事が大切だと思います。
実際V-MAX1200で9秒台を目指してチャレンジを開始してからは、カムシャフトが折れてしまった一回を除いて、走る毎に分析と対策を行い頭打ちする事無くベストを更新し続けて、そのまま9秒台に突入させチャレンジを終えました。
趣味のレース活動ではお金が無くても不格好でも、乗り手、作り手共に愛情を込めて心折れず小さな調整の積み重ねこそが大切だと思います。
今回のこの燃焼室に対する考え方も、元々はお金が無くて高価な社外品が買えなかった修業時代に何とか純正部品の応用でパワーを出してやろうと小さな事の積み重ねで試行錯誤をしていた貧困時代に確立した考え方です。
貧乏は人を育てる、素材を生かして日々努力です。

念押しですが、
今回紹介した加工を生かすにはハイコンプ化が絶対条件です。
ノーマルの状態で燃焼室容積を上げてしまうと大きく出力が下がってしまいますので、
・燃焼室容積の測定
・圧縮比の計算
・圧縮比の調整
最低でもこの3点を行う技術が無いと、この加工は活かせませんのでご注意ください。



おまけ
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VMAX1200でのゼロヨン9秒チャレンジをしていた当時にオーナーさんがスタートに苦しんでいたので一旦スタートがし易いように20馬力ほどパワーダウンをさせましたが、内容的にはフロントバンク(2番、4番)とリアバンク(1番、3番)で圧縮比を変えてスタート時の瞬発的なトルクの出方を調整していました。
その状態で9秒入りこそ出来ませんでしたが、誰もやっていない事にチャレンジするのが面白いと思いますので、定番も良いですが、イレギュラーなチャレンジもお勧めします^^




akane380 at 00:46|PermalinkComments(2)